日本のRWDを医療ビッグデータとして活用するには

2018.11.1清水 央子 氏
東京大学大学院薬学系研究科 ファーマコビジネス・イノベーション教室 特任准教授
MD Concierge & Services株式会社 代表


既成概念にとらわれず自由な発想を活かしたい。私たちの会社では、こんな想いから外部講師を招き、セミナーを実施しています。

近年、製薬企業の間でも活用に向けた取り組みが急速に進むリアルワールドデータ(RWD)の活用・研究に長年携わり、現在は研究成果を社会に還元すべく精力的に活動を続ける清水央子氏をお招きし、「医療ビッグデータ・RWDは医療をどう変えるか?」というテーマでご講演いただきました。
RWDの歴史から現状、活用における課題や展望まで満遍なくお話しいただき、日常業務ではあまりうかがい知ることができないRWDの世界を垣間見ることができました。
今回は、その講演内容の一部についてご紹介します。

講師:清水 央子 氏

東京大学大学院薬学系研究科 ファーマコビジネス・イノベーション教室 特任准教授
MD Concierge & Services株式会社 代表
東京工業大学大学院で統計学修士を取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー、米国大手会計士事務所にてコンサルティングに従事。帰国後、米系ITコンサルティング、エドワーズライフサイエンス(株)、アイ・エム・エス・ジャパン(株)でマーケティングの責任者を歴任し、2007年グラクソ・スミスクライン(株)に入社。当時、黎明期だった各種民間医療データベースを活用した治療や薬剤使用実態の分析、疫学研究および医薬品市場の分析チームをリードし、同社におけるRWDを活用した医薬品の開発、販売活動を推進する。2014年東京医科歯科大学大学院にて医療情報データベースの比較研究で博士(医学)号取得し、2015年5月より東京大学大学院薬学系研究科ファーマコビジネス・イノベーション教室にて医療ビッグデータの利活用についての研究に携わり、現在に至る。2018年2月よりMD Concierge & Services株式会社代表を兼務

周回遅れの日本、RWDの活用法は?

医療データ(いわゆるRWD)の利活用では海外に比べると大幅に遅れている日本の現状を踏まえ、電子政府といわれるエストニアの先進事例の紹介から、RWDについてお話しいただきました。

日本の医療情報の中心はレセプトですが、レセプトデータは集積しやすい利点はある一方「レセプト病名」やアウトカムがわからない等レセプトならではの課題もあり、現状ではレセプトなどRWDの“スモール”データが複数散在している状況です(図)。
実際に製薬会社が活用しているRWDには、調剤レセプト(JMIRI等)、健保データ(JMDC等)、医療施設ベースの医事会計データ(MDV等)などがありますが、それぞれに情報の網羅性・粒度に特徴があり、それらを組み合わせることで市場の全体像をより高い精度を持って掴むことが可能なビッグデータとなり得ます。しかし、それでもなお完全に情報を網羅するのは難しいのが現状です。

RWD解析で大事なことは「何がわかるか」ではなく「何を知りたい」か!

今後、活用が期待される政府のオープンデータについては、ナショナルデータベース(NDB)の一例をご紹介いただきました。数量ベースでは、ある領域の医薬品の中で最も処方されているように見えていた薬剤が、処方機会や患者数ベースで捉えようとした場合には、1日投与量や院内・院外処方などの情報を考慮して解析すると、必ずしも処方数量が最も多い薬剤=最も多くの患者さんに処方された薬剤ではないことが分かります。RWDの解析においては「何がわかるか」を起点とするのではなく、「何を知りたいか」という目的やリサーチクエスチョンを持って見ることが重要だということです。

また、現在の日本のRWDでは医薬品による治療のアウトカム評価や副作用の感知が困難といった限界もあります。その中で現在のRWDを最大限利活用するためにどうするべきか。法整備や患者さんの協力によるPHR(=Personal Health Record)での医療情報の一元管理、AIの活用などにより、RWDの活用の可能性が飛躍的に大きくなることが期待されます。

データを一元管理することのリスクを念頭に置きながらも、RWD解析がよりよい医療につながり国民の健康に寄与することを示していくことにより、日本において価値あるRWDの利活用を模索する清水氏の講演は、RWDについての新たな視点や知見が得られるものでした。

(メディカル・ライティング部 天野 準)

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