New Normal からAfter Digitalへ

2021.4.6講師:原 暢久 氏
プレシャス・コミュニケーション・ジャパン 代表取締役
※ 本講演は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、オンライン形式で実施されました。


既成概念にとらわれず自由な発想を活かしたい。私たちの会社では、こんな想いから外部講師を招き、セミナーを実施しています。

昨今、世の中は身の回りのものも含めてデジタル主体の社会へと変化し、加えて「withコロナ」「afterコロナ」を考慮していかねばならない状況で、私たちは何を考え、どう行動したらよいのか。
医薬品・ヘルスケア産業のプロモーション施策やコミュニケーションデザインに詳しい原暢久氏に、「New Normal からAfter Digital」をテーマとしてご講演いただきました。

4つの切り口「Digital Marketing」「Channel」「市場特異性」「多様性」

本講演では、「Digital Marketing」「Channel」「市場特異性」「多様性」という4つの切り口で、New Normal からAfter Digitalにおける医薬品マーケティングの可能性と課題について語っていただきました。

①Digital Marketingとは
「Digital Marketing」とは、単にデジタルデバイスを使ったプロモーションのことではありません。それは、個客(医師)とのコミュニケーションをデータ化し分析することを通じて、ヒト(MR)を含むすべてのChannelを駆使したコミュニケーションのあり方をデザインし、購買プロセスの促進に繋げるものです。Channel同士の有機的な連携なしにデジタルコンテンツを個客に配信するだけでは、効果的なコミュニケーションを通じた購買プロセスの促進に到底繋がらないので、Digital Marketingとは言えません。
Digital Marketingを考えるうえでは、「Before Digital」 と「After Digital」の違いを認識することが重要です(図1)。Before Digitalとは、デジタルとリアルの情報の大部分が別々の情報として扱われる状態を指し、After Digitalとは、リアルの情報もすべてデジタル化された情報として吸収され、分析されうる状態を指します。こういった状態は医療用医薬品に限らず一般消費財の世界にも当てはまるので、Digital Marketingは決して特殊なマーケティングではなく、将来のマーケティングそのものと言えます。
加えて、Digital Marketingを通じたプロモーションを支える3つの柱は「コミュニケーション」「コンテンツ」「ソリューション」で構成され、これをさらに包括するのが「ブランディング」です。複数の領域でさまざまな医療用医薬品を販売する製薬企業では、このブランディングが機能しておらず、個々の製品のブランドの方向性が一貫していないケースが見受けられます。

②デバイス(Channel)の特性
個客(医師)を取り巻くChannelにはそれぞれに特性があり、役割があります。誘導系のChannel(メール、e広告、SNS)は文字通り誘導には向いていても、情報の刷り込みには向いていません。一方、情報提供に長けたChannelである医療系ポータル、インターネット講演会、オウンドサイトは、個客の嗜好性を分析して次の効果的なコミュニケーションの機会に繋げることには不向きです。そして、これを得意とするChannelが、ヒト(MR)なのです。

③医療用医薬品市場の特異性
医療用医薬品の市場は一般消費財のそれとは異なります。市場ターゲット規模が圧倒的に小さいうえに、購買決定者(医師)が最終消費者(患者)と異なるなどの特殊性を帯びています。このような市場では、大規模ターゲット向け、あるいはペルソナ設定を通じて限定したターゲット向けの商品開発が困難であることから、シェアを獲得するためには個客のニーズに応じたパーソナルアプローチを展開することが重要です。なお、そのようなアクションを評価するためのKPI/KGIとしては、購買決定者の意思・判断によらない因子が大きく影響する売上高などではなく、購買決定者の行動変容や意識変容に関する指標を用いるのが適切です。

④多様性
個客(医師)の情報収集ルート(MR・オウンドサイト・インターネット講演会・医療系ポータル)を独自に分析したところ、疾患領域によって嗜好性やデバイス使用頻度が異なる可能性が示唆されました。したがって、個客のニーズを領域ごとに把握し、その多様性を認識することが、Digital Marketingを成功させるうえで肝要と考えられます。

New Normalにより加速するマーケティングスタイルの変化・社会環境変化

かつては、MRを主要Channelとする適度な質・量の情報提供が行われていました(図2)が、現在ではデジタルデバイス系のChannelが加わったために情報の洪水状態になっています(図3)。そのような中で個客(医師)は、例えばインターネット講演会等で情報を収集した後も、さらなる情報を求めて他のChannelを漂流している傾向が見受けられます。このことから、コンテンツの質をはじめ、さまざまな側面から個客のニーズに対応できるコミュニケーションのあり方を再構築することが必要と考えられ、そのための個客データの集積・分析が不可欠です。
しかし、その個客データの集積が難しくなる時代が訪れるかもしれません。なぜならば、近い将来、処方箋医薬品を集約された物流拠点から患者に直接配送するサービスが始まると予想され、そのことによって個客周辺での処方実態が今まで以上に不透明化する可能性があるからです。
このように、医療におけるイノベーションは、Digital Marketingを取り巻く環境までも一変させてしまう力を秘めていることから、Digital Marketingそのもののあり方も、環境の劇的な変化に応じて常に進化させていかなくてはなりません。

 
 

本講演は、医薬品市場という特異性の中で個客ニーズの多様性に応えるために、いかにしてあらゆるChannelを有機的に連携させ、効果的なコミュニケーションをデザインするかという、Digital Marketingの可能性と課題について考える貴重な機会となりました。

(メディカル・ライティング部 柴尾明里)

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