- 真和セミナー
【セミナー18. 講師:沼田 佳之 氏】MRの新しいカタチ
2021.11.11 講師:沼田 佳之 氏
株式会社ミクス 代表取締役 Monthlyミクス編集長
株式会社ミクス 代表取締役 Monthlyミクス編集長
※ 本講演は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、オンライン形式で実施されました。
既成概念にとらわれず自由な発想を活かしたい。私たちの会社では、こんな想いから外部講師を招き、セミナーを実施しています。
新型コロナウイルスの感染拡大から1年半以上が経過し、私達の生活においてデジタル活用はすっかり定着したものとなりました。MR活動も急速なデジタルシフトが進み、MRに求められる役割、すなわち”MRのカタチ”は大きな変貌を遂げています。
今回は、マンスリーミクス編集長 沼田佳之氏をお招きし、「MRの新しいカタチ」というテーマでご講演いただきました。MR活動の変化、販売情報提供活動監視事業、そしてこれからの時代の医療といった多岐にわたるご講演内容の中から、ここではニューノーマルの時代のMR活動を中心に、その一端をご紹介いたします。
株式会社ミクス 代表取締役 Monthlyミクス編集長
<講師略歴>
北里大学を1987年に卒業後、外資系製薬企業に入社。営業本部に所属し、医薬情報担当者(MR)として活動。この経験を踏まえ、1992年から製薬業界向けの日刊紙の記者として、厚生労働省、製薬業界、医学・医療界の取材に従事。キャップ、デスク、編集長を経て、2008年12月にエルゼビア・ジャパン株式会社に移籍。Monthlyミクスの編集長に就任。
2017年7月にエルゼビア・ジャパンから株式会社ミクスに事業が承継され、同社の代表取締役兼ミクス編集長として現在に至る。
デジタルとリアルMRの”ハイブリッド”にこそ、処方最大化のチャンス
著しい環境変化のあったこの1年半、MR活動にも大きな変化がありました。「医師の印象に残ったDTL数」を情報チャネル別にみると、コロナ以前に比べてMRの割合は73%から54%へと減少し、インターネット、WEB講演会の割合は26%から45%まで上昇しました(図1)。また「デジタルコンテンツ利用率が4割以上」と回答したMRは88.9%にのぼり、今やデジタル活用スキルは、MRにとってMustで求められるスキルとして、その位置づけが大きく変化してきています。
一方で、こうしたデジタル中心のMR活動には、いくつかの弱点があることも分かってきました。そのひとつに、医師が幅広い企業のデジタルコンテンツに気軽にアクセスするようになったことが挙げられます。これは一見メリットのようにも見えますが、自社製品のみならず他社製品の情報インプット量も増えていることから、デジタルコンテンツ視聴後にMRの訪問がない場合、他社製品に処方が流れるというデメリットが考えられます。せっかくのチャンスがあっても、MRによる「クロージング」がないために処方を逃している可能性があるという点は、デジタルコンテンツを活用するうえで見逃せないポイントです。
そこで製薬各社は、MRと医師とのコンタクト機会を最大化するための施策や体制整備の検討を始めています。すでにいくつかの企業はオンライン専任MRの配置やオンライン面談プラットフォームの全社導入などの施策を展開し始めました。MR以外のメディアで情報を入手した医師の多くは、その後MRに情報確認をすることが分かっており、デジタルコンテンツと適切なタイミングでのMR面談のハイブリッドにより、処方獲得の機会を逃さず、最大化できる可能性があると考えられます。
デジタルシフトによるMRの二極化
一方で、こうしたデジタル活用に伴い進んだのが、MRの二極化です。「日常業務の中で、リモート面談の割合が60%以上」と回答したMRは、HP担当では約半数(大学病院担当:55%、大学病院を除く大病院担当:44.1%)を占めていましたが、「リモート面談が20%未満」と回答したMRも少なからず存在し(10%、17.6%)、50代以上ではその割合が34.2%にのぼっていました(図2)。デジタルコンテンツを活用することで医師との関係性を強めているMRが多くいる一方で、デジタルシフトに苦労したり、リアルの活用をより深めたいという価値観を持つMRが一定数いるという点は、今後の各社の動向をみるうえで、注目すべきポイントであると言えるでしょう。
時代の変化とシンクロし、変わり続ける”MRのカタチ”
ニューノーマル型営業では、デジタルとリアルのハイブリッド型の営業活動が基本となります。その成功には、リアルまたはリモートを状況に応じて適切に選択することが必須であり、MRの目利きの良さが求められます。さらにデジタルの普及により、地理的、時間的な制約がなくなり、「いつでも」「どこでも」面談を行うことができるようになりました(図3)。これまでのMR面談は1:1(MR to Dr)が基本でしたが、これからは複数の医師を集めた小規模勉強会の開催(MR to Dr group)も主流になってくると想定されます。人脈を水平展開し、医師同士をつなげてコーディネートする能力も、MRのスキルとして求められる時代になってくると考えています。
最後に、これからの時代の医療は、患者中心の医療です。オンライン診療やオンライン服薬指導、医薬品のデリバリー、治療アプリの活用など、ペイシャント・サポート・プログラムの取り組みをいかに地域に根づかせるかという点も、今後MRが担う役割になっていくと考えられます。これからのMR活動を考えることは、これからの時代の医療を考えることです。時代の変化とシンクロして、MRの活動、そして製薬企業のあり方はこれからもどんどん変化し続けていくと考えています。
(メディカル・ライティング部 西 真名美)