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【セミナー24. 講師:沼田 佳之 氏】アフターコロナ時代のデジタル戦略

2022.10.6 講師:沼田 佳之 氏
株式会社ミクス 代表取締役 Monthlyミクス編集長

※ 本講演は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のため、オンライン形式で実施されました。

既成概念にとらわれず自由な発想を活かしたい。私たちの会社では、こんな想いから外部講師を招き、セミナーを実施しています。

製薬産業は現在、大きな変化を迫られています。物価高騰や円安により、製薬企業の研究開発・製造コストはこれまでにない勢いで高騰しています。また、高齢化で社会保障給付費が増加する一方、人口減少により社会保険料収入は減少しており、薬価や医療費は更に抑制されていくものと考えられます。
時代の変化に対応できるMRをどのように育成していくべきか、これからの製薬企業の組織はどうあるべきかについて、マンスリーミクス編集長 沼田佳之氏にご講演いただきました。

講師:沼田 佳之 氏
株式会社ミクス 代表取締役 Monthlyミクス編集長

<講師略歴>
北里大学を1987年に卒業後、外資系製薬企業に入社。営業本部に所属し、医薬情報担当者(MR)として活動。この経験を踏まえ、1992年から製薬業界向けの日刊紙の記者として、厚生労働省、製薬業界、医学・医療界の取材に従事。キャップ、デスク、編集長を経て、2008年12月にエルゼビア・ジャパン株式会社に移籍。Monthlyミクスの編集長に就任。
2017年7月にエルゼビア・ジャパンから株式会社ミクスに事業が承継され、同社の代表取締役兼ミクス編集長として現在に至る。

働き方改革が求められる背景 ~市場環境の変化~

製薬企業では現在、自立型人材の育成が喫緊の課題になっています。これまでの製薬企業は、どちらかというと軍隊式で均一な人材を育成してきました。しかし、デジタルの導入など社会環境が変化する中でビジネスを継続するためには、会社から教えられたことだけを遂行するのではなく、自ら学び、行動できる従業員を育てていく必要があります。
自立型人材育成のために導入した施策について、製薬各社大手17社にアンケートをとりました(図1)。最も多くの企業が採用していたのは、副業・兼業の導入でした。次いで社内公募制(MR職とは全く異なるポジションに応募できる制度)や自己投資支援制度(勉強したい内容について会社に申請し、承認が下りれば経済的支援を得られる制度)、社内留学制度(一時的にMRとは異なるポジションにつき、勉強することができる制度)など、MR業務にとらわれず様々なことにチャレンジできる機会を与えることによって、従業員が自ら学ぶ機会を創出できることを狙いとした施策が導入されていました。

デジタル化で変わるMRの評価指標

新型コロナウイルスの流行で、製薬業界でも加速度的にDX(Digital Transformation)が進みました。製薬会社による情報提供のうち、印象に残っているものについて医師にアンケートをとると、MRとデジタルツールの影響力の差は、ほぼなくなってきていることがわかりました。また、かつてMR活動とデジタルツールの活用は分離されている傾向にありましたが、新型コロナウイルスの流行により、MRが効果的にデジタルツールを活用することの重要性が認識されるようになりました。そんな中、製薬会社によるMR活動の評価指標も大きく変わってきています。
MRの評価指標としてこれまでよく用いられてきたのは、面談回数や面談内容、処方獲得数でした。一方で、近年注目が集まっているのがリアクション率とリターン率です。「リアクション」とは、WEB講演会を視聴した医師が、視聴後に担当MRに質問をすることです。一方「リターン」とは、WEB講演会の視聴後にMRが医師から質問を受けて、デジタルのコンテンツを紹介することをいいます。
近年、WEB講演会の回数はますます増加しています。医師に生じた疑問点にリアルタイムに対応することができなければ、処方機会を喪失することになります。これからのMRにとっては、リアクション率とリターン率を高めていくことは不可欠であると思われます。

変わる営業組織

では医師は、製薬企業の従業員をどのように評価しているのでしょうか。実は、職種によって評価のポイントが異なることが明らかになっています。
担当(リアル)MRの評価理由について調査すると、「自分(医師)の状況をよく把握している」という項目が上位に挙がった一方で、リモート専任MRは「WEB 面談ツールを用いた説明がよくトレーニングされていてわかりやすい」という項目が上位に挙げられていました。また、MR以外の学術部門の社員については、「対象製品に関する理解が深く 、WEB 面談内での質疑応答に満足した」という点が評価されていました。
医師が求めているのは、適切な情報を早く入手し、処方機会を最大化することです。そして、医師に効果的に情報を提供するためには、これら役割の異なる従業員がうまく役割分担できるよう、組織編成を見直す必要があります。
これまでの製薬企業の組織は、地域・エリア重視の、いわば一国一城型でした。本社の下に営業本部、その下に支店・営業所があり、そこにMRが配置されていました。しかしこれからは、グローバル本社の下に各プロダクトチームがあり、そこに専門MRが配置され、デジタルチームが横串で貫くような組織が求められていくことでしょう(図2)。

デジタル時代においては、地理的要件で従業員を縛る必要はありません。たとえば、互いに親しく影響力のある二人の医師に、同時にオンライン面談を設定します。仮に地理的に離れていても、一度に情報交換できますし、そうすればそれぞれの医師から、各地域に効果的に情報を浸透させることができます。
これからは、例えばMR、オンラインMR、デジタルマーケティング担当、学術担当が集まって一つのチームとなり、医師を、あるいは地域を攻略していくという発想が主流になるでしょう(図3)。このチームにサポートとして本社スタッフが入れば、更に効果的に医師にアプローチできるようになるのではないでしょうか。

(ソリューションデザイン部 中田 菜摘)

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